玄 大 松 氏 受賞論文要旨

「戦後韓日関係と領土問題」

-韓国における「独島問題」の言説とイメージ -

写真 玄大松

玄 大 松(ヒョン デ ソン)
  • 【経歴】

    1980年、韓国釜山海洋高校航海科卒業後、1987年1月まで航海士として乗船勤務。 1988年、韓国外国語大学政治外交学科入学。 1992年、同卒業。 1993年、東京大学大学院法学政治学研究科研究生課程入学。 1997年、同修士課程修了。 2002年、同博士課程修了。 2004年1月、博士(法学)号取得。 現在東京大学東洋文化研究所外国人特別研究員。

本稿は、「独島問題」のレンズを通じて、韓国人の独島に対する認識、日本イメージ、そして対日感情が形成される過程とその構造を分析しようとするものである。

本稿では、まず、「領有権問題」の客観的事実を明らかにした後に、その事実が日韓でどのように語られ、社会にどのように伝えられるのかを比較分析した。そして、韓国における「独島問題」の言説が、韓国人の「独島認識」と「日本イメージ」の形成にどのように影響するかを、中・高・大学生の意識調査を通じて分析した。

本稿は序章と終章の他、三つの章で構成されている。第1章では、領有権をめぐる日韓両国の主張の対立点を記述し、その対立の原点をアメリカの戦後処理政策の形成過程に遡り、考察した。そして、1996年の独島危機までの途を辿り、サンフランシスコ講和条約で曖昧な形で処理されてしまった「独島問題」がその後、日韓国交正常化交渉過程における交渉のカード、国内政治の手段として使われながら、歪みつつ、膠着化する過程を明らかにした。

第2章では、戦後日韓の「独島/竹島問題」関連研究と1990年から2001年まで12年間の独島/竹島関連記事(韓国新聞9紙、日本新聞5紙)の内容分析(content analysis)を行い、「語られているもの」は何であり、その際引き合いに出される「表象」は何かその影に「語られていないもの」は何かなどを比較分析した。そして、韓国で構築された「独島論の言説空間」に、領有権問題のグレー・ゾーンが欠けていること、記事の中心が市民レベルの人物・団体であり、その性格はナショナリスティックであること、韓国のジャーナリズムが、独島の領有権主張に過去問題、歴史認識問題などを結びつけ、歴史の記憶を絶えず想起させていることを言及頻度分析で明らかにした。

第3章では、韓国の中・高・大学生2,112人の意識調査を通じて、「独島認識」、「対日イメージ」の構造と相関関係を分析した。
そして、韓国の学生たちは、マスメディアを通じて幼児期に既に「独島は韓国の領土である」認識と、否定的「日本・日本人イメージ」が形成され、教育の役割は、すでに形成された認識に太鼓判を捺す役割をしていることが分かった。韓国学生たちの日本イメージは、「日本国家・日本社会・日本人」の三層構造であり、日本という国家は全体的に否定的であるが、日本社会と日本人イメージは称賛と蔑視とのアンビバレンスである。

最後に、「独島認識」と「日本・日本人イメージ」は相互にどのような影響を及ぼし、それは日韓関係における態度にどのような影響を及ぼすのかを重回帰分析し、独島認識と日本イメージとの因果関係を明らかにし、また、独島認識と日本イメージが日韓関係における態度に影響を及ぼすことをも確認した。

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