国際シンポジウム2007の概要

写真 国際シンポジウム2007会場風景

プログラム
  • 日 時
  • 2007年8月3日(金)
  • 13:00~17:00
  • 場 所
  • 兵庫県立淡路夢舞台国際会議場
    (兵庫県淡路市夢舞台1番地)
  • テーマ
  • 「エネルギー問題に直面するアジア」
  • 内 容
  • (1)記念講演(13:30~14:45)
  • 「中国におけるエネルギー政策について」
    • 周 大地
    • 中国国家発展改革委員会エネルギー研究所前所長
  • (2)パネルディスカッション(15:00~17:00)
    • ●パネリスト
    • 周 大地
    • 中国国家発展改革委員会エネルギー研究所前所長
    • カレン・シュナイダー
    • オーストラリア農業資源経済局次長
    • 十市 勉
    • 財団法人日本エネルギー経済研究所専務理事
    • 室田 武
    • 同志社大学経済学部教授
    • 森光 信孝
    • トヨタ自動車株式会社BRエネルギー調査企画室シニアスタッフエンジニア
    • 五百旗頭 真(コーディネーター)
    • 防衛大学校長、神戸大学名誉教授

井植敏淡路会議代表理事による開会の挨拶、井戸敏三兵庫県知事代理として齋藤富雄兵庫県副知事による歓迎挨拶に続いて、中国国家発展改革委員会エネルギー研究所前所長の周大地氏から、「中国におけるエネルギー政策について」をテーマに、記念講演を行っていただきました。
 記念講演では、「中国では、過去5年間年率9%という急激な経済成長の影響により、エネルギー消費量が、2006年は24億トンに達した。現状のままでいくと、エネルギー需要は、2020年までに2倍以上となり、石炭換算50億トンのエネルギーを消費することとなるので、環境及びエネルギー安全保障上脅威である。」旨、中国のエネルギー消費の現状について述べられるとともに、「中国国務院では、省エネルギーに関する多くの決定と指示を既に発表しており、数値的には、5ヵ年計画で20%、年率にして4%のエネルギー消費を減らすことを目標に、それぞれの省と市に工場やその他の大量エネルギー消費部門での省エネルギー計画と目標の策定を命じている。」など中国政府の省エネルギーに対する取り組みについて述べられました。最後に、「エネルギー問題への対処のためには、全ての分野において世界規模での協力が必要である。中国は、エネルギー政策や技術を日本から大いに学びたい。」旨、述べられました。
 引き続いて行われたパネルディスカッションでは、防衛大学校長・神戸大学名誉教授の五百旗頭真氏によるコーディネートのもと、「エネルギー問題に直面するアジア」をテーマに、記念講演者周大地氏の同席のもと、アジア太平洋地域でのエネルギー消費の現状と課題解決のための方策について、政府や民間での取り組みを含め、多面的で活発な議論が展開されました。
 オーストラリア農業資源経済局次長のカレン・シュナイダー氏は、「経済成長と人口増加の2つの要素によって、中国とインドでエネルギー消費が急速に増大しており、国際エネルギー市場への要求の高まりとともに生じる世界の資源確保の問題に対応するため、資源開発や開かれた国際貿易および投資体制を維持すること、そして、エネルギー需要の増加が及ぼす影響を抑制することが必要である。」旨、述べられました。
 財団法人日本エネルギー経済研究所専務理事の十市勉氏は、「現在直面しているエネルギーの安定供給や地球温暖化問題の解決のためには、産業部門、家庭、業務部門、輸送部門等で、省エネルギーとエネルギーの効率的利用を最大限進めていくことが必要であり、そのためには、再生可能エネルギー・バイオ・太陽光・風力発電を相当取り入れていくこと、また、原子力発電を安全性に最大限留意しながら進めていくことも必要である。そのためには、省エネルギー・低炭素排出分野で世界トップクラスの日本の技術や仕組みをアジア、世界にいかに広めていくべきかが日本の最大の課題である。」旨、述べられました。
 同志社大学経済学部教授の室田武氏からは、東シベリアと極東地域でのロシアの石油・天然ガスのエネルギー開発の現状について、「サハリン1」と「サハリン2」プロジェクトを含め詳細に述べられるとともに、オホーツク海の生物多様性とサハリンの開発を両立する上で、日本の環境技術が果たせる可能性について述べられました。
 また、トヨタ自動車株式会社BRエネルギー調査企画室シニアエンジニアスタッフの森光信孝氏からは、「経済産業省の「新国家エネルギー戦略」では、2030年までに化石燃料の消費量を運輸部門で20%下げることを目標としており、トヨタ自動車もその数値を目標として自動車開発を進めている。バイオ燃料を10%、電気を10%使えば実現できる。将来的に高効率のバイオ燃料技術が急速に進めば、バイオを使った内燃機関と電池を組み合わせたプラグインハイブリッドが開発されることとなる。」旨、ハイブリッドカーを中心に、トヨタ自動車の先進的な自動車開発の取り組みについて詳細な説明がありました。
 各パネリストの発言を受けて、記念講演者の周大地氏から、「トヨタ自動車の例は素晴らしく、全ての国でそういう取り組みを行えば、技術面での選択肢が必ずあると考える。中国もできるだけ多くの新しい技術を学んで、省エネルギー、温室効果ガス排出量の削減のために努力していくことが必要であるが、導入可能な技術ができるまで、国民に発展を待つよう政治的に強要することはできず、エネルギーを全ての国民に供給しつつ、できるだけCO2の排出量が少ない経済パターンに変えていく必要がある。」と、発展と温室効果ガスの削減を同時に行うためには、技術面での取り組みが重要である旨、述べられました。
 最後に、コーディネーターの五百旗頭真氏より、「地球全体・人類全体の課題を解決するためには、国どうしの信頼関係・友好関係を大事にして、先進国と発展途上国が協力して1つのコミュニティを築く手法で、発展段階に応じた責任を負う必要があるというのが結論と感じている。」旨、パネルディスカッションをまとめられ、駐日フィリピン大使など計11カ国からの参加者を含む約250名の聴衆から拍手による賛同を得て、国際シンポジウムを終了しました。

ページのトップへ戻る