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HATコラム

若い世代の暮らしと多自然地域の都市の魅力

人と防災未来センター上級研究員中林 一樹

平田 富士男
兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科教授


1959年兵庫県姫路市生まれ
1982年東京大学農学部農業生物学科卒業。同年建設省入省
1999年姫路工業大学 自然・環境科学研究所 助教授を経て、
現在、兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科教授
兵庫県立大学政策科学研究所兼務教員
兵庫県立淡路景観園芸学校教員

庄原市と丸亀市の思い出
筆者は前職時代いわゆる「転勤族」で、東京以外に高松市(1984~86)、広島県庄原市(1988~90)、名古屋市(1990~92)、長野市(1994~95)、香川県丸亀市(1997~99)での勤務を経験した。このうち、家族を伴なっての生活は庄原市以降であり、長男は生後5カ月で東京から庄原に引っ越し、二男はこの庄原市で生まれた。また、三男は長野市で生まれ、丸亀市では上2人が市内の小学校、三男は地元の保育所にお世話になった。この生活を家族、特に家内と振り返ってみると、特に印象深いのは庄原(当時人口約2万2,000人)と丸亀(同約7万8,000人)での生活である。もちろん、その都市での生活に対する印象は、その当時の自身の仕事の内容、人生上の出来事、家庭内の様子などが影響し、都市の環境だけで決まるものではない。しかし、一定の都市機能(病院、教育、交通、買い物、レクリエーション施設など)の集積がありながらも、身近に豊かな自然環境があって「落ち着き」「ゆとり」を実感でき子育てには適した環境であったこと(つまり「多自然地域」にありながらも「拠点都市機能」がある)がその印象形成に影響していたことは間違いない。そして、何よりこの両都市の印象を強くしているのは、転勤族でありながらも地域のコミュニティが私たちを受け入れ、その一員として暮らし、その一員であることを実感させてくれたことである。特に丸亀では地元のお祭りで地域の人々と一緒にみこしを担がせてもらったことは今でも大きな思い出となっている。

多自然地域の拠点都市の位置付け
さて、今大きな政策課題となっている「地方創生」、筆者はこれまでに事例として挙げたような多自然地域の拠点都市が、その課題解決の大きな鍵の一つを握っているのではないかと考えている。昨年設けられた「まち・ひと・しごと創生本部」(関係閣僚会議)が決定した「まち・ひと・しごと創生総合ビジョン」では、「人口減少の進み方」が三段階(第一段階:若年人口は減少するが、老年人口は増加する時期(2010~40 年)、第二段階:若年人口の減少が加速化するとともに、老年人口が維持から微減へと転じる時期(2040~60 年)、第三段階:若年人口の減少が一層加速化し、老年人口も減少していく時期(2060 年以 降)で進むと予想し、「東京都区部や中核市・特例市は『第一段階』に該当するが、人口5万人以下の地方都市は『第二段階』、過疎地域の市町村は既に『第三段階』に入っている」としている。さらに、「第一段階の人口減少スピードはそれほど速くないが、第二・第三段階になると『人口急減』ともいえる事態が待ち受けている」とも警告している。

このようななか、「限界集落」に代表される「第三段階の地域」に関する危機意識は既に各般で共有されているが、第二段階に入っている「人口5万人以下の地方都市」に対する危機意識は、それらに比べて薄いと言わざるを得ない。第二段階の地域での人口減少は一気に進む、との警告を踏まえれば、この5万人クラスの都市の活性化が大きな課題となってくる。しかも、この5万人クラスの都市は、兵庫県内を見てもかなり存在しており、その市域も広い。さらに、そのバックに広がる中山間地域をまず支える、という位置関係をも踏まえるならば、大都市地域との中間に存在するこれらの多自然地域の拠点都市の果たすべき役割は再認識されるべきである。

若い世代にとっての魅力の発掘と顕在化の施策
このような都市、大都会でいろいろ無理をしながら暮らしている若い世代にとっては、大都市とは異なる別の魅力があるはずである。筆者自身の体験は、転勤だったので「転居先で仕事を確保する」という課題は幸いにしてなかったが、そのような問題解決を含め若い世代にその地域の魅力をクリアにしていくことができれば、前述したように一定の都市機能の集積はあるわけだから、いきなり中山間地域への移住という高いハードルを越えるのではなく、自然体で心豊かな暮らしを実現しようとする意識を持つ多くの若い世代を引き付けるものがあるはずである。だから、そのような若い世代がその地域活性化の担い手になってもらうよう誘導していく施策が重要になるのであり、そのような施策こそがこれから各市町村で策定が求められる「地方版のまち・ひと・しごと創生総合戦略」のキーコンテンツとなると考えている