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HATコラム

南海トラフ巨大地震の被害軽減に向けて

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター上級研究員 金田 義行

金田 義行
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター上級研究員


1953年生まれ
東京大学理系大学院地球物理修士課程修了(理学博士)
香川大学学長特別補佐
四国危機管理研究教育・研究・地域連携推進機構副機構長
(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター上級研究員

今年2016年で1946年昭和南海地震から70年が経過する。その間、日本では64年新潟地震をはじめ、68年、2003年十勝沖地震、1978年宮城県沖地震、83年日本海中部地震、93年北海道南西沖地震、95年阪神・淡路大震災、2004年中越地震、07年中越沖地震、そして11年東日本大震災、さらに今年の熊本地震といったような甚大な被害を発生させた地震・津波災害が多発している。また桜島をはじめ雲仙岳、御嶽山といった火山災害も発生している。まさにこれが私たちの日本列島の地震火山環境の実態である。そして、今後最大の地震課題は南海トラフ巨大地震(以下南海地震)と首都圏直下地震の備えであることは言うまでもない。

すでに内閣府が南海地震の最大級の地震津波モデルと被害想定を公表しているが、次の南海地震にどのように備えるべきであろうか。次の南海地震や首都直下地震の発生時期やその地震・津波規模についての確定的な予測は不可能であるものの、その発生時期の時間スケールの絞り込みや地震規模の評価といった予測研究や被害軽減に向けた対策を推進する減災研究は必要不可欠である。予測研究として、例えば南海地震発生帯のある程度切迫度が高まっている状況で日向灘でM7.5クラスの地震が発生した場合、南海地震の発生をトリガーする結果がシミュレーションで示された。さらには、海上保安庁が公表した海底音響GPS観測の結果では、東海沖ならびに高知県足摺沖の南海地震発生帯でプレート境界の固着が大きいことが明らかになった。これらの研究的知見に加えて、東南海地震震源域に整備されたDONET1(地震・津波観測監視システム)に続き、紀伊水道沖の海底にDONET2が整備され、地震・津波が発生した場合、より迅速な早期検知・評価に資する観測体制が四国沖以東で構築された。これらの観測システムは地震・津波の早期検知への貢献とともに、2011年東日本大震災(東北日本太平洋沖地震)で明らかになった、「海底地殻変動観測の重要性」と「先駆的な海底地殻変動」が南海地震震源域においても発現した場合に、それらをモニタリングし、予測研究に資する役割も担っている。

また、熊本地震では、九州の災害救済拠点の役割を担う熊本県自体が甚大な地震被害を受けたように、南海地震の際の救援・救済連携自治体が、巨大地震前後の内陸地震や火山噴火等で被災した場合の対応は、巨大地震に関連した広域複合災害の被害軽減、迅速な救援対応の視点からも今後の重要な課題である。実際に、1944年東南海地震、46年南海地震の前後には、43年に鳥取地震、45年に三河地震、48年に福井地震が発生しており、南海地震は内陸地震も併せた広域複合災害である。さらにさかのぼれば1854年安政地震、55年安政江戸地震、1703年元禄江戸地震と4年後に発生した07年宝永地震、さらには49日後の富士山噴火といった地震・津波・火山災害を含めた広域複合災害(国難)が発生している。これらの被害軽減には、理学的な予測・シナリオ研究、工学的な対策・対応ならびに社会科学的な災害対応など多岐にわたる分野の連携協力が必要である。

迅速な復旧復興いわゆる地域強靭化、国土強靭化を推進・実現するためには、農業、水産業等の社会の生活基盤となる1次産業分野、復興の要となる製造業等の2次産業分野、さらには豊かな社会、スマート社会のための教育、通信、医療など多くの分野で構成される3次、4次産業などのBCP/DCPの実現と継続(BCPM/DCPM)が必要であり、災害前、災害時、災害後といったそれぞれのステージで活躍できる人材を育成するための「減災科学」(強靭化のための理工学、社会科学分野の領域横断的な枠組み)が不可欠と考えている。南海地震の発生サイクルはおよそ100年~200年と考えられており、昭和の東南海・南海地震から70年、1854年の安政地震からすで160年が経過している現在、さまざまな研究分野、産業分野の各分野において備え、被害軽減対策整備に要する時間はあまり多くは残されていない。被害軽減、人材育成ならびに情報共有を基盤とした最新科学技術の推進とその有効活用の取り組みが急務である。