基調提案1:「農業と工業の融合を」

写真 井植 敏

井植 敏  ●三洋電機株式会社代表取締役
〔概 要〕
   20世紀後半の50年で人類は偉大な発展を遂げ、世界の経済は7倍、人口は2.4倍、水の使用量は3倍、二酸化炭素の排出量は4倍へと拡大。言わば「膨張の半世紀」であった。その結果、地球の自然システムに狂いが生じ、環境破壊が人類共通の問題となったのである。
この環境破壊の影響を大きく受けて、人類に不可欠な食糧の生産量の伸びは鈍化。一方、経済発展と人口増加で食糧消費量は増加の一途。今や「不足の時代」に突入したと言える。加えて環境破壊による大気や土壌、水の汚染によって食糧そのものが汚染されるようになり、安全で安心な食糧の確保は喫緊の課題となった。
こうした問題の解決には、安全安心な食糧を、環境に優しく高効率で生産することが必要だ。例えば工業的考え方を導入した施設型農業。水耕栽培では水を循環有効活用し栽培環境を制御することで、農地が無くても安全安心な野菜栽培が可能である。また今、日本は人口減少に向かう中、日本の風土に適し、健康面でも注目される「米」の重要性を再認識し、米をベースにおいた新しい食のシステムをいかに創りだすかが大きな課題である。畜産業や水産業も含めて、工業との融合で新しい「しくみ」を創りだせば、解決への道筋が見えてくるのではないだろうか。
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