第12回アジア太平洋研究賞(井植記念賞)受賞者 阿拉木斯(アラムス)氏

論文タイトル「清代内モンゴルにおける農地所有とその契約に関する研究―帰化城トゥメト旗を中心に―」

写真 阿拉木斯(アラムス) 氏
阿拉木斯(アラムス)

【略歴】

1996年7月内蒙古農業大学卒業。1996年8月-2001年8月内蒙古草原興発集団で就業。2001年9月-2004年1月内蒙古農業大学大学院修士課程。2004年4月-2006年3月神戸大学研究生。2006年4月-2008年3月神戸大学大学院総合人間科学研究科博士前期課程。2008年4月-2010年3月神戸大学大学院国際文化学研究科研究生。2010年4月-2013年3月神戸大学大学院国際文化学研究科博士後期課程。2013年3月博士(学術)の学位取得。2013年4月神戸大学大学院国際文化学研究科異文化研究交流センター協力研究員。

【要旨】

 

本研究は、中国・内蒙古自治区のフフホト市一帯に相当する「帰化城トゥメト旗地域」で清朝政府がモンゴル人兵士に給与として与えた農地である戸口地を研究している。現地文書館や日本に残る漢文・モンゴル文・満洲文の農地契約文書や土地訴訟文書を用いた研究で、3部計10章からなる。
第1部はこの地域の農業と戸口地を扱う。序章で気候条件を述べ、第1章で清朝の土地制度と兵士の問題を概説する。第2章から本論に入り、漢文地方誌史料を使って漢人小作農がこの地域に山西省北部から作物や栽培方法を導入したことを実証した。第3章では、清朝実録とモンゴル文・満洲文公文書を利用し、乾隆8年に配布された農地が嘉慶年間以降戸口地と呼ばれるようになったことを証明した。
第2部では農地の契約と所有実態を中国本土と比較する。第4章では、漢人小作農への賃貸契約がいつでも解約できる期限無設定型、一定期間解約できない期限設定型、永久賃貸契約の3種に分かれることを解明した。モンゴル人地主の権利は、この順番で制限されていく。第5章ではモンゴル人兵士による「農地質入契約」も同じ3種類に分かれ、モンゴル人の小作料受領権喪失、清朝の軍事力低下につながることを証明した。第6章では兵士たちの土地売買契約を検証し、第7章ではこの地域での灌漑農業の存在を証明して、モンゴル人兵士たちによる漢人小作農への水と水路の賃貸契約の存在をも実証した。
 第3部では契約文書書式の来源を実証する。第8章では中国本土と帰化城トゥメト旗の漢文農地賃貸契約文書の書式が一致することを証明した。第9章では、帰化城トゥメト旗のモンゴル文農地質入契約文書の書式が中国本土から来たことを証明した。第10章では売買契約文書も中国本土から来たと証明した。終章では結論と今後の課題を述べた。

 
ページのトップへ戻る