「アジア太平洋文化賞」 ルース・マックベイ氏 受賞のことば

写真 ルース・マックベイ

ルース・マックベイ
  • 【略歴】

    ロンドン大学名誉準教授(東南アジア政治)。1961年、コーネル大学にてPh.D(政治学)を取得後、イェール大学、マサチューセッツ工科大学国際研究センター、コーネル大学、ロンドン大学東洋アフリカ研究所で研究職、教職に就いた。 その研究は、初期には、インドネシアの共産主義運動、さらにもっと一般的にインドネシアにおけるイデオロギーと社会変容についてであったが、のちには南タイ農村部における社会的・イデオロギー的変容、さらに東南アジア政治経済エリートの成立へと拡大していった。その主たる業績としては「インドネシア共産主義の台頭」(1965)、「東南アジアの変容」(1978)、「東南アジアの資本家」(1992)、「タイの地方における富と力」(2000)などがある。

今回、「第4回アジア太平洋文化賞」を頂き、ありがとうございます。この賞を提唱されました井植敏三洋電機株式会社代表取締役をはじめアジア太平洋フォーラム・淡路会議の皆様に心からお礼申しあげます。

このようなすばらしい賞は、アジア太平洋地域の研究、文化的協調を促進することに対するアジア太平洋フォーラム・淡路会議の、そして井植代表理事の積極的な取り組みのあらわれでもあります。この賞は崇高な目標を掲げており、かつ、今日、世界が直面するグローバル化の過程において、最もすばらしい一面を象徴するものであると思います。

グローバル化は、国境を越えると同時に、さまざまな文化の違いに気づき、それらに対する尊重を与えてくれるものです。21世紀はその幕開けとなる数年間に、すでに文化的無理解、不寛容がもたらす影響をまざまざと見せつけましたが、こういったグローバル化こそが21世紀に平和実現への希望をもたらすものだと思います。

一方、様々な関心を持つリーダーが集うこのようなフォーラムには多くの可能性、柔軟性、主導性があり、より意義深い成果を生みやすいのではないかと期待しています。さらに、アジア太平洋フォーラム・淡路会議の賞賛すべき点は、地域社会や市民社会レベルでの活動を重視していることです。このことは、人々の生活に直接インパクトを与え、人々を公の場への参加を促すものであると思います。

新しい世紀は、まさにアジアが中心になっていく世紀といえます。アジアの次世代の人々が、中心的な役割をどう担うのかということを決めていくわけです。若い専門家、アジア太平洋地域の様々な専門家が育つということは非常に重要です。その意味で、アジア太平洋フォーラム・淡路会議が、単に過去の業績に目を向けているだけではなく、「井植記念アジア太平洋研究賞」を通して、若い専門家の努力に目を向け、また、この賞が、日本人だけではなくアジアの若い研究者にも開かれたものであることが非常に素晴らしいと思うのです。こうした取組みが続いていくことを私は心から望んでいますし、より広いアジア太平洋地域へと広がっていくことを期待しています。若い専門家は、まさに将来の希望であり、彼らの力が認識されればされるほど、そして文明間の理解が進めば進むほど、現在世界が経験している大きな変化が、悲劇的な結果ではなく有益なものとなるでしょう。

アジア太平洋フォーラム・淡路会議はまだ始まったばかりですが、その早い段階に、崇高な意図を持ち、時宜にかなったプログラムを推進するアジア太平洋フォーラム・淡路会議からこのような賞をいただいたことを大変うれしく思っています。こうしたフォーラムの活動は、国際理解と国際協調の源となるものと信じています。私は、残りの人生をさらなる東南アジア研究にささげたいと考えていますが、それが、この度の賞を授与していただいたアジア太平洋フォーラム・淡路会議と井植代表理事のお気持ちに応えて行くことになると思います。最後に、明るい展望を持ってアジア太平洋フォーラム・淡路会議のさらなる発展をお祈りし、受賞のことばといたします。ありがとうございました。

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