基調提案1

写真 川口 雄次

川口 雄次  ●WHO健康開発総合研究センター所長
〔概 要〕
   21世紀を迎えて、顕著になっているのは、「価値観」の世界的な変化ではないだろうか。「重厚長大」型産業から「軽薄短小」型へ、「中央集権」から「地方分権」へといった社会的な大きな変動の中、「人と自然の共生」がこれまでになく、深刻な形で問われているのではないか。
しかしながら、地球環境問題というのは、既に40年近く前から警鐘が鳴らされているにもかかわらず、人間の命と健康が脅かされるところまで追いつめられないと、人類はなかなか反応しないものであるようだ。こうしたことから、環境を「生活環境」というふうに捉え、身近でローカルな部分への取り組みを行うことにより、グローバルな地球環境への貢献に寄与できるのではないかと考えている。
環境が、人々の健康にどのような影響を及ぼすかということについては、しっかりとした実証的な研究によるデータを出していくべきと考えている。
21世紀のアジアは、深刻な人口爆発、高齢化の進展、都市への人口集中等により危機的状況にあると言える。
WHO神戸センターでは、「都市と健康問題」を中心にグローバルかつ学際的な活動を進めているが、今後、地球環境問題の解決に当たり、次の点が重要になってくると考えている。
まず、大学、研究所、企業、それから公的機関といったものが全員集まり、それぞれの特性を活かしながら学際的なアプローチを行うこと、次に、国は実証的なデータに基づいて政策決定を行うこと、最後に、環境問題を考える際、基盤はコミュニティーであり、地域の組織であることを再認識する必要があるということである。
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