基調提案2

写真 宮内 義彦

宮内 義彦  ●オリックス株式会社 代表取締役会長
〔概 要〕
   アジア太平洋地域においては、発展と環境の調和という難しい問題を含みながら、経済が推移している。 こうした状況のもと、アジアの現状にふれながら、日本のあるべき姿というか進むべき方向についての提案を行いたい。 さて、いま最も高い経済成長力を示しているのは中国である。中国にはアジアへの海外投資の約5割が集中し、かつての日本のように“世界の製造工場”と言われている。中国の台頭は今後も続くことが予想され、その結果 、日本の製造業の空洞化、アジアの空洞化が一層進むことが懸念される。 しかし、経済面はさておき、中国の国内情勢をみると、政治の自由化が行われていないため、社会の不安定要素が非常に大きく、さらに、環境問題の世界への輸出国といった側面もある。 範囲を広げてアジア地域をみても、東アジアの不安定さが顕著になってきている。例えば、インドネシアにおける政情不安、フィリピンにおける政変、あるいはマレーシアの後継問題、台湾と中国の関係など非常に多くの問題が顕在化してきている。 こうした中、私は、長年にわたり経済が停滞している日本が、成長をマイナスからプラスへと転じることが、アジアにとって最も大きな経済問題であり、そのためには、経済構造をより競争力のあるものに変えていく、と同時に、企業経営の改革を進めていく必要があると考えている。 さらに、調和のある施策を遂行していくことができるガバナンスのしっかりした政府を作るとともに、日本の高度に発展した社会性、そして、地球問題に対応できる知的な能力の集積を活かし、21世紀においては、本当の意味での自然とともに伸びる社会への転換のイニシアティブをとっていくことが日本に求められるのではなかろうか。
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