基調提案2:物のグローバリゼーション、危機のグローバリゼーション

写真 高坂 節三

高坂 節三  ●コンパス・プロバイダーズL.L.C. ゼネラルパートナー日本代表
〔概 要〕
   今年、フォードは創業100周年を迎えた。フォードのT型車量産体制とそれを支えた、スタンダード・オイルを中心とする石油産業の発展が、20世紀の世界を形づくったと言っても過言ではない。
戦後の日本は、このアメリカ・モデルを目標に、追いつけ追い越せとがんばってきた。東南アジアの各国も、雁があとに続いて飛び立つように発展を続け、今や日本を追い越す勢いを示している。これを中南米の「輸入代替型経済」と較べ、「輸出主導型経済」の成功と人は呼ぶ。
中国が「改革解放」政策を取ると共に、ソ連・東欧もまた門戸を開放し、西側経済に参加しようとし、世界経済は「輸出主導型経済」モデルを採用しつつ、一斉にグローバライズしたのである。ユニクロ現象とも呼ばれる低価格商品の氾濫は、「一物一価」の経済発展を加速させると同時に、物余り現象をもたらし、世界的デフレ時代に突入した観すらある。常に「進歩」の概念で世界経済を引っ張ってきた西欧の思想は、「成長の限界」にぶち当たったとも言えよう。
一方、こうした動きに取り残された発展途上国は、貧困からの脱却のため、正にこれから「進歩と成長」が必要であるとして、先進国の協力を求めている。マクナマラ世銀総裁(当時)がいみじくも言ったように、「この宇宙船地球号に乗っている三分の一の人々は一等席に座り、残りの三分の二の人々は三等席に座っている」。このアンバランスが、テロや疫病の蔓延、さらに環境破壊といったグローバルな問題解決を難しくしている。
「進歩」ではなく、「自然との共生」という伝統的思想をもったアジアが、デフレ下の経済発展とグローバライズした危機の解決のために、新しいモデルを考える時期に来ているのではなかろうか。
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