基調提案2:「戦災と震災を越えて」

写真 千野 境子

千野 境子  ●産経新聞論説委員兼大阪特派員
〔概 要〕
   近代日本は二つの大戦と二つの大震災を経験した。第一次大戦では欧州各国が惨禍と疲弊に見舞われる中、米国とともに日本は戦勝の恩恵に預かり、とりわけ大阪は戦争景気を謳歌し、日本一いやアジア随一の産業都市へと発展した。
しかし富国強兵は第二次大戦での完膚無きまでの敗戦で終わった。人類初の被爆体験を含めて、日本人にとっての20世紀後半とは壊滅と再生の歴史であった。
一方、日本は地震という自然災害の危機と背中合わせをする世界の中で特異な国でもある。奇しくも関東・関西という日本の二大地域は等しく関東大震災と阪神・淡路大震災を被った。近代日本の社会・経済変動は戦争だけでなく震災も深い要因を提供している。そもそも日本人の精神形成に戦争と震災はどのように影響を及ぼしてきたのか。またそこから私たちが将来に向けて汲み取るべき教訓は何か。以上を踏まえながら、安全保障と危機管理の問題を一考してみたい。
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