基調提案3:「東アジアにおける戦略的発展」

写真 ユスフ・ワナンディ

ユスフ・ワナンディ  ●戦略国際問題研究センター共同設立者・理事
〔概 要〕
   東アジア地域では、この地域における将来の発展についての2つの戦略的な流れが展開されている。すなわち、米国の戦略的なプレゼンスおよび東アジア共同体の構築である。米国の戦略的な支配は過去60年にわたり継続されてきたが、東アジア共同体の構築についてはまだ始まったばかりであり、まずは経済分野から、そして徐々に政治安全保障の分野へと広がっている。2つの戦略的な流れはお互いを補完するものであるべきであり、対立するものであってはならない。補完的な関係を実現するためには、米国は、この構想が米国に対抗するものではなく、米国の関与のもとに同地域の平和と開発を維持するためのものであることを理解する必要がある。構想には次の3つの戦略的な目的がある。
(1) 急速に力を伸ばす大国、中国をどのように地域に取り組むか、また現状の力をどのように維持させるか、
(2)中国と日本の正常化をどのように支援するか、
(3)中国が自ら強大な力を有するようになったとき、長期的に中国と米国の衝突を防ぐためにどのような支援をすればよいか、である。米国に、将来の東アジア共同体の構築を受け入れさせるためには、同地域で米国と最も親密で重要な同盟関係にある日本が重要な役割を果たす必要がある。中国、日本の両国はいまだ歴史上の事実が妨げとなり先導的な役割を担うことができないため、ASEANも共同体の構築のために力を貸すことができるであろう。
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