基調提案4:「アジア危機の教訓をどう中国経済へ適用するか-日本の役割-」

写真 吉冨 勝

吉冨 勝  ●独立行政法人経済産業研究所長
〔概 要〕
   誰をも驚かせた1997年のアジア危機の発生は、世界銀行が東アジアの奇蹟的高成長の持続を讃えた報告書を発表してから(1993年)、たった4年しか経っていなかった。こうした短い間に、一体、何が生じたというのであろうか。 この奇蹟的成長と金融危機の間をつないだ「リンク」は何だったのか。「奇蹟」を生む東アジアの強みと「危機」を生む弱みを同時に経済学的に解明して始めて、今後の東アジアの新しい発展のパラダイムのあり方も分かるし、これを今日の中国経済に適用することもできる。この「リンク」は、二つの視角から解明できる。一つは国際金融とバランスシート論。二つは、市場を支えるに必要な制度インフラ(法の整備、銀行監督など)の進化の観点である。前者の視角を通して、アジア危機が新しい性格をもった「資本収支危機」であったことが明らかになる。後者の視角からは、金融の自由化が既存の制度インフラによっては管理できない新しいリスクを生み、それが危機を生むことが明らかになる。今後、中国が97年型の国際金融危機に陥らないためには、上の二つの視角から、日本を含めたアジア地域全体の協力が必要である。
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