基調提案3:「生涯現役社会の条件」

写真 清家 篤

清家 篤  ●慶応義塾大学商学部教授
〔概 要〕
   日本は世界に類をみない高齢化を経験しつつある。こうした高齢化のもとでは、従来の年齢基準による現役世代と引退世代の区分は合理性を失う。
 さいわい日本では高齢者自身の就業意欲が高い。働く意思のある高齢者の能力を活用し、高齢者自身に高齢社会を支えてもらえるような「生涯現役社会」をつくることが重要である。問題は国の年金制度や企業の雇用制度に、生涯現役社会の実現を阻害するような要因があることだ。厚生年金制度や定年退職制度は、高齢者の就業意欲を挫くだけでなく、その能力の活用を阻害するものとなっている。
 高齢者の就業を進めるための賃金・雇用制度の変革は、企業が厳しい競争環境に生き残るための変革と方向性を一にしている。高齢化する人口構造と高度化する市場競争のもとで豊かな経済社会を目指すには、個々人の能力を高めるための資本投資の充実は不可欠だ。「生涯現役社会」の実現は、アジア太平洋地域全体のテーマにもなりうるものである。
ページのトップへ戻る