日本:北朝鮮のミサイル、核開発計画に対する懸念から、国家安全保障と自衛隊の機能拡大がより大きな優先課題となっている。漸進的に改革を推進し、憲法改正に向けた慎重かつ着実な動きがある。改憲は憲法による制約の一部を取り除くべく行なわれるものであるが、依然として、武力行使や同盟国である米国への依存に対する懐疑的意見も存在する。
中国:四半世紀の間に、国内的にも対外的にも急速な変化を経験する。地理的に常にアジアの中心に位置してきた中国は、地域の経済や国際関係においても中心的地位を占めつつある。数多くの国内問題を抱えるものの、経済・外交分野での視野はますます外に広がりを見せている。台湾問題の悪化が中国の抱える最大の懸案である。
韓国:国としての自信を増す中、大規模な世代交代が進み、政治の抜本的改革が行なわれている。隣国の北朝鮮に対する姿勢にも変化がみられ、同国との新たな調和関係を模索している。その一方で、ますます複雑さを増す米国との同盟関係も維持している。
北朝鮮:隣国や米国の懸念をよそに、核武装国家へと急速に突き進む。依然として、強い経済国が並ぶ地域での例外的存在であり、経済移行の初期兆候が国内で見え始めている。
数多くの変化が渦巻くなか、米国はどのような政策を追求すべきなのか ― 11月の大統領選でどの党が勝利を収めるにせよ、このことが米国にとっての大きな課題となっている。
北東アジア地域は今後、「北朝鮮問題に関する六カ国協議プロセスは果たして、北東アジアの地域安全保障に取り組むための恒久的手段となり得るのだろうか?」という、大きな質問に突き当たることになろう。
ジョンズ・ホプキンズ大学国際問題研究大学院 Nitze School(ワシントンD.C. /アメリカ合衆国)の客員教授で著名なジャーナリスト。1952年プリンストン大学卒業。在韓米陸軍に服役後、1955年から38年にわたりジャーナリストの道を歩む。1968年からの25年間はWashington Post紙の記者として米国の政策と北東アジア地域を担当(1972~75年は東京特派員)。うち17年間は海外特派員として勤務。5冊の著書を持つオーバードーファー氏は、故マイク・マンスフィールド上院議員・駐日大使の伝記を書いている。また、全米報道協会から「エドウィン・M・フード賞」を受賞しているほか、ジョージタウン大学が毎年、外交分野での優れた報道に対し授与する「エドワード・ウィンテル賞」も受賞。さらに、プリンストン大学が国に大きな貢献をした者に贈る「ウッドロー・ウィルソン賞」も受賞。プリンストン大学客員教授、オーバーシーズ・ライターズ社社長を経て、現在はアジアソサイエティと外交問題評議会の委員、ワシントン外交問題研究所のプログラム議長を務めている。