国際シンポジウム2009の概要

写真 国際シンポジウム2009会場風景

プログラム
  • 日時
    2009年7月31日(金)
    13:00~17:05
  • 場所
    兵庫県立淡路夢舞台国際会議場
    (兵庫県淡路市夢舞台1番地)
  • テーマ
    「世界経済危機をどう生き抜くか
    -世界の知恵・アジアの知恵・日本の知恵」
  • 内容
    • (1)開会挨拶(13:00)
      井植 敏
      アジア太平洋フォーラム・淡路会議代表理事
    • (2)歓迎挨拶
      齋藤 富雄
      兵庫県副知事
    • (3)記念講演(13:30)
      「太平洋地域における経済危機後の国際収支バランス再構築について」
      バリー・ボズワース
      ブルッキングス研究所 上級研究員
      「経済危機と東アジアの金融協力」
      チャロンポップ・スサンカーン
      元タイ財務相
    • (4)休憩(15:10)
    • (5)記念講演(15:25)
      「経済危機と日本企業の課題」
      吉原 英樹
      南山大学大学院ビジネス研究科教授
      「地域活性化への人財開国」
      南部 靖之
      (株)パソナグループ代表取締役グループ代表
      (コーディネーター)
      阿部 茂行
      同志社大学政策学部教授
    • (6)閉会(17:05)

井植敏淡路会議代表理事による開会挨拶、齋藤富雄兵庫県副知事による歓迎挨拶に続いて、ブルッキングス研究所上級研究員バリー・ボズワース氏、元タイ財務相チャロンポップ・スサンカーン氏、南山大学大学院ビジネス研究科教授吉原英樹氏、(株)パソナグループ代表取締役グループ代表南部靖之氏の4名の方から記念講演を行っていただきました。各講師の講演の後には、同志社大学政策学部教授阿部茂行氏をコーディネーターに会場との質疑応答が行われました。

まず、ブルッキングス研究所上級研究員のバリー・ボズワース氏は「太平洋地域における経済危機後の国際収支バランス再構築について」をテーマに講演され、「今回の金融危機の大きな原因は過度な金融緩和の下、サブプライムローンによって信用度が高くない人に対する投機的なマーケットができたことだが、FRBが指摘するとおりアジアに貯蓄がありすぎることも要因の一つであり、私はアメリカとアジアの両方が咎を受けるべきだと考える。」と経済危機の原因分析をされた後、「アメリカの家計の富は低下し将来的に消費が増えないので、回復には時間がかかる。今後アメリカが輸出を増やし経済を再建すれば、その際他の国々は経済成長のエンジンとしてアメリカに頼れなくなり、世界市場での競争が激化し、国によっては保護主義が強くなるおそれもある。今後は東アジアとアメリカ、つまり太平洋をはさむ貿易不均衡が問題となり、アメリカとアジアが保護主義に走らず、貿易・国際収支の流れをいかに調整するかが、今後の世界経済の大きな課題となるだろう。」と述べられました。

次に、元タイ財務相・タイ開発研究所特別フェローのチャロンポップ・スサンカーン氏が「経済危機と東アジアの金融協力」をテーマに講演され、「1997-98年、東アジアで起こった経済危機からの教訓はPPP(正しいパラダイム、プルーデント、プラグマティックの3つのP)でまとめることができる。資本の動きを正しいパラダイムに基づき見ていくこと、投資や消費が過剰になるとリスクが大きくなるためプルーデントな姿勢が大事であること、次にプラグマティック、つまり実際的な政策の処方箋をもつことである。特に、盲目的にIMFに追随してはいけない。世界は流動的に変わっているので、固定観念を持ってはいけない。」とタイでの経験を述べた後、ASEAN+3(日中韓)にオーストラリア、ニュージーランド、インドが加わった「ASEAN+6」による経済関係強化の流れやチェンマイ・イニシャチブ(CMI)についてを説明され、「輸出のエンジンが作動し外貨準備が増える中でCMIへの関心が薄れ時間がかかったが、各国の財務大臣の間で今後は1箇所に外貨準備をプールすべきという合意ができた(CMIM:チェンマイ・イニシャチブのマルチ化)。最も重要なことはこのメカニズムを調整する組織・仕組みであり、今後の危機に対応し東アジア地域の協力と統合を進めていくことで地域からの資金調達ができるようにIMFとはまったく違う役割を果たす調整機関が必要だ。」と述べられました。

次に、南山大学大学院ビジネス研究科教授吉原英樹氏は「経済危機と日本企業の課題」をテーマに講演され、「国際的に見て日本企業のパフォーマンスは良くはなく、成長性やシェア、利益率も低い。危機に直面している今とるべき対策は、短期には資金確保、在庫・経費・人員削減などの「生存対策」、中長期対策として、国内での女性の活用と海外での現地人の活躍の場を重視する人本主義、日本的生産が挑戦を受けているモジュール経営への対応、新興国市場に合わせた製品の開発、海外でも黙々と良いことを続ける陰徳の経営などが重要だ。」と述べた後、「現在、グローバル市場の収縮と内需志向が起こっているが、これは多国籍企業には当てはまらない。日本は「豊か・安全・規制・年功序列・高齢化・人口減少」の国。一方、海外は「成長・競争・自由・変化・適者生存・スピード・創造的破壊」などで特徴付けられる。世界を舞台に活躍できる日本の多国籍企業にとって、成長発展のチャンスは海外にある。国際経営の勧めが結論だ。」と述べられました。

最後に、(株)パソナグループ代表取締役グループ代表の南部靖之氏が「地域活性化への人財開国」をテーマに講演され、「人材の流動化のため、都市から人材を誘致する試み「淡路チャレンジファーム」を昨年10月から行っている。地域を活性化するのは人である。人材を迎え入れ人の血を化学反応させるための開国、つまり経済ではなく社会生活によって社会を豊かにすることに焦点を絞って取り組んでいる。」と述べられた後、淡路島での農業特区、教育特区、医療特区などの構想を紹介し、「5年前東京大手町に地下農園を開設し成功している。その仕組みを淡路島に持ってこられないか考えている。もしも特区を申請して許可が下りなくても、町の皆さんが心を開いて迎え入れれば、それが真の意味の人財開国の特区になる。本日ご出席の皆様にも力をお借りして、自分のできる範囲で人材育成による地域活性化を進めて行きたい。」と述べられました。

会場には駐日フィリピン大使、駐日アルゼンチン大使など計7カ国からの参加者を含む約200名の聴衆が参加し熱心に耳を傾けました。

ページのトップへ戻る