学術交流部

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自治体災害対策全国会議

阪神・淡路大震災以後、世界各地で様々な大災害が多発する時代を迎えています。
大災害は、その都度異なる形で襲ってきます。これに対応するため、全国の自治体職員が、大災害被災自治体の復旧・復興への取組を共有しつつ、今後予想される様々な災害への備えについて考える「自治体災害対策全国会議」を開催しています。

阪神・淡路大震災30年
第14回自治体災害対策全国会議を神戸市で開催

第14回自治体災害対策全国会議を、阪神・淡路大震災から30年に当たる今年、「阪神・淡路大震災の教訓を生かし、南海トラフ巨大地震に備える」をテーマに10月8日神戸市で開催しました。

基調講演

基調講演で河田惠昭・人と防災未来センター長は、「相転移」という概念を提示しました。これは社会に内在する構造的・制度的脆弱性により被害が劇的に拡大する現象で、過去の大災害では想定の20~30倍の被害になることを指摘されました。阪神・淡路では密集地域での木造家屋倒壊、東日本では避難しなかった人の多さ、近年の水害では床上浸水の増加が相転移になったことを解説されました。その上で、「起こることが分かっているなら対策はできる。相転移を見つけて起こさないまちづくりに取り組むことが事前防災成功の鍵」「自治体も何が地域の相転移になるか自分で見つけなければならない」と訴えられました。

特別報告

特別報告で内閣官房防災庁設置準備室の本間優子企画官は、「防災庁が設立されれば、自治体の防災部局も呼応してパワーアップしてほしい」と呼びかけ、「国難級の大災害に備え、相転移となる現象を平時から先回りして見つけて対策を打つことが必要。防災庁では自治体と一緒に地域の弱点を探してつぶしていく」と説明されました。

基調報告

基調報告で神戸市の久元喜造市長は、震災復興の取り組みとして、早期のインフラ復旧、復興基金による被災者個人への公的支援など画期的な仕組みを紹介されました。復興の先を見据えた災害に強いまちづくりでは、大容量送水管や下水道ネットワーク整備、全小学校区での防災福祉コミュニティ結成などを説明されました。また防潮鉄扉の遠隔操作、帰宅困難者誘導システムなど先進的な防災DXの取り組みや、能登半島地震での珠洲市へのフルリモート広報支援など、DXを活用した遠隔地からの応援の取り組みも紹介されました。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、兵庫県立大学の阪本真由美教授のコーディネートで4名のパネリストが登壇しました。北淡震災記念公園の米山正幸総支配人は、震災で家族を亡くした母親を見て「二度とこのような人を出してはいけない」と語り部活動を始めたこと、当初反対されていた記念公園が今では地域づくりの拠点になったことを語られました。南あわじ市の阿部志郎副部長は、能登半島地震の教訓から貯留型マンホールトイレや自走式水洗トイレカーの導入、地元集会所での備蓄、小中学校をメイン会場とした防災訓練の実施など実践的な取り組みを紹介しました。黒潮町の村越淳課長は、全職員が通常業務に加えて防災業務を兼務する防災地域担当制を導入したことで、防災対策が圧倒的スピードで進み、町民の諦めをやる気に転換できたこと、さらに食物アレルギー対応缶詰の製作や防災ツーリズムで産業・観光につなげていることを報告しました。伊豆市の山田和彦課長は、学識者が主導する協議会が住民と丁寧に意見交換を進め、津波災害特別警戒区域指定を実現したこと、観光の中心地である松原公園に観光施設と複合した津波避難タワーを建設できたことを説明しました。阪本教授は「災害が起きるのは止められないが被害を減らすことはできます。全員で本気の事前防災に取り組みましょう」と呼びかけて締めくくられました。

総括

総括で室﨑益輝企画部会長は、震災30年を「社会変動」「経験風化」「進化」の3つの側面から整理されました。社会変動では能登半島の災害関連死を人口構成の変化という相転移の現実としてとらえることの重要性を、経験風化ではうまくいかなかったことを伝える姿勢の必要性を、進化では防災を文化として育てるプロセスを評価されました。その上で「防災庁設置という転換期に、自治体こそ相転移を考えリアリティある対策を点検すべき」と呼びかけられました。

2日目は人と防災未来センターと阪神高速震災資料保管庫を視察しました。来年は熊本地震10年に当たり、熊本県での開催が決定しています。