パネルディスカッション

冒頭にコーディネーターの天野明弘関西学院大学教授から経済発展と環境劣化が同時に進行しているアジア太平洋地域に おいて、近年、重要視されている「都市環境の管理」、「淡水資源の確保の方法」、そして「森林を含む自然環境の保護」 の3つが緊急課題として提起され、これを受けて4人のパネリストによる討論が行われた。
 まず、伊藤滋アジア防災センター長は、自然災害の多い国や地域に対しては、金銭的な支援よりも知恵を使った支援がより重要だと指摘。地元の住民が環境情報を共有化できる仕組みづくりの具体例として、カンボジアにおける洪水の発生地域や 洪水の時にも使える水源を示した地図の作成、また、ネパールにおける地崩れの発生地域をあらわした地図の作成、いわゆるハザードマップづくりの効用について意見を述べた。
 次に、津田和明関西経済同友会代表幹事は、環境改善技術はコストアップにつながるため、なかなか広まらない現実を踏まえ、日本がアジア太平洋地域の環境保全のためにできる方策として、ODAを環境改善に対する協力ということに特化してはどうかと提案。さらに、環境汚染が人類の生存に大きな影響を及ぼしているということを実感できるよう日本でも小学校の うちから環境教育を始めることが大切だと述べた。
 マレーシア・サバ大学のマリアッティ・モハメド熱帯生物保全研究所長は、森林火災や伐採により熱帯雨林が減少し、生物の多様性が失われつつあるが、これはローカルな問題ではなく、地球全体にかかるグローバルな問題だと指摘。対策として、今後は、持続可能な伐採を進めるとともに植林をしていく必要があること、また、マレーシアでも重要な収入源となっている自然を楽しむネイチャーツーリズム事業を進めていくこと、さらに、環境影響評価の実施や一般の人々の認識を高めるための環境教育が必要であることなどを提言した。
 廣野良吉成蹊大学名誉教授は、途上国は貧困の克服や生活水準の向上を優先的に進めているため、環境問題に対する認識が非常に低く、関心がある場合でも公害や熱帯雨林の破壊など身近なことに限られていると指摘し、今後は途上国の子供たちに対するしっかりとした環境教育の必要性が増すと述べた。さらに、地方自治体や企業、NGOなどが植林などを通じて環境問題に積極的に取り組んでいる現状を踏まえ、環境協力のネットワーク化を進めるとともにグローバル化した経済のなかではコストダウンが要求されるため、経済と環境の両立が可能となる技術的な研究が必要であると提言した。
 最後に、コーディネーターの天野明弘教授が、環境民主主義、即ち、

  • 1 一般の市民が環境情報へのアクセスと利用可能性を持つこと
  • 2 環境に関する意思決定に一般市民が直接参加できる機会をつくること
  • 3 環境に利害関係をもつ主体が法の保護を 容易に受けられること、
この3つの条件を徹底することによって、環境と経済を含めた社会全体の発展につながっていくとの考え方を示し、討論を終了した。

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