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HATコラム

事前減災と「兵庫行動枠組」

室﨑 益輝(副理事長兼研究調査本部長)

室﨑 益輝(副理事長兼研究調査本部長)

1944年生まれ
京都大学大学院工学研究科修士課程修了。工学博士
ひょうごボランタリープラザ所長
兵庫県立大学特任教授・神戸大学名誉教授
(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構 副理事長兼研究調査本部長

大災害からの被害を軽減する上では、減災のための事前の「備え」と「構え」が欠かせない。この備えと構えの必要性を的確に示したのが、第2回国連防災世界会議で採択された「兵庫行動枠組」である。この兵庫行動枠組が、来年仙台で開催される予定の第3回国連防災世界会議で再び議論されようとしているので、事前減災の備えと構えの内容に即して、兵庫行動枠組について触れておきたい。

事前減災としての備えと構え
ここで「備え」というのは、事前に取り組むべき課題をいい、「構え」というのは、その課題を実行するための基盤をいう。
事前の備えには、予防医学的備え、緊急治療的備え、回復再生的備え、公衆衛生的備えの「4つの備え」がある。予防医学的備えでは、被害を生じさせないように、脆弱な体質の改善をはかることが求められる。都市の不燃化や建築の耐震化がこれに当たる。緊急治療的備えでは、被害の拡大を許さないように、応急対応の体制や資源を整備しておくことが求められる。活動マニュアルの作成や緊急装備の用意がこれに当たる。回復再生的備えでは、被害の回復を迅速にはかれるように、復旧や復興に関わる制度や資源を予め準備しておくことが求められる。復興制度の確立や復興基金の整備がこれに当たる。最後の公衆衛生的備えでは、被害軽減を側面から支援できるように、被害軽減のための土壌や文化を強化しておくことが求められる。コミュニティの醸成や共生文化の構築がこれに当たる。
もう一方の構えでは、危険認識的構え、減災文化的構え、体制構築的構え、制度整備的構えの「4つの構え」が必要となる。危険認識的構えと減災文化的構えは、精神的な土壌に関するもので、リスクコミュニケーションに努め正しい危険認識を育むのが前者、正しい価値観に基づく慣習として生活文化を育むのが後者である。ヒューマンウエアに関わる構えということができ、防災教育と密接に関わっている。体制構築的構えと制度整備的構えは、態勢的な環境に関するもので、官民の防災組織体制を整備するのが前者、復興や救助に関わる法制度を整備するのが後者である。ソフトウエアに関わる構えということができ、防災行政と密接に関わってくる。

兵庫行動枠組の重要性
この備えと構えに関わって、「兵庫行動枠組」を交通整理しておこう。この行動枠組では、減災のための3つの戦略と5つの行動目標が示されている。
3つの戦略では、第1に「持続可能な開発の取り組みに減災の視点を取り入れる」、第2に「コミュニティを含む様々なレベルでの体制整備に努める」、第3に「予防から復興に至るすべての段階でリスクの軽減をはかる」ことが提起されている。第1は減災の視点、第2は減災の構え、第3は減災の備えを提起したものと、解することができる。
5つの優先すべき行動目標を図に示す。第1に、防災を優先する行政姿勢やガバナンスの構築が求められている。減災のための制度の整備も提示されており、態勢面の構えが求められている。第2に、災害リスクの評価やそれに関わるコミュニケーションが求められている。精神面の構えの中の危機認識が求められている。第3に、防災意識の醸成や防災教育の推進を提起しており、精神面の構えの中の減災文化が求められている。第4に、世界の地域社会が抱える脆弱性に焦点を当て、その脆弱性の克服あるいはリスクの軽減が強調されている。ここでは、事前の備えの中の「予防医学」と「公衆衛生」が強調されている。最後の第5では、事前の備えの中の「緊急治療」と「回復再生」が強調されている。
以上のように、私の提起した「備え」と「構え」が5つの行動目標として、兵庫行動枠組の中で簡潔に整理され提起されている。備えと構えという事前減災の枠組みが、まさに国際標準であることが分かる。

仙台会議に向けての取り組み
来年の仙台の会議では、兵庫行動枠組の検証を通して、事前の減災の取り組みのあり方があらためて議論される。東日本大震災の被災地で開催されるということもあって、事前の減災に加えて事後の復興の取り組みも議論されよう。ここで必要なことは、各都市が事前減災あるいは事前および事後の復興の実績を持ち寄ることである。各自治体が地域計画の見直しを行い、事前減災の取り組みを一層強化して、仙台会議を迎えるようにしたい。