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HATコラム

復興まちづくりについて、この20年何を思ってきたか

人と防災未来センター上級研究員 小林 郁雄

小林 郁雄
人と防災未来センター上級研究員


1944年生まれ
大阪市立大学工学研究科修士(都市計画専攻)修了
兵庫県立大学緑環境景観マネジメント研究科特任教授
(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構 阪神・淡路大震災記念
人と防災未来センター上級研究員

●今最も必要で緊急を要する重要事はまず、「雇用の場である産業経済復興」への総合的な取り組みであり、そのための<機能被害>の実態把握を急がねばならぬ。次は「人々の生活基盤であるコミュニティ復興」への対策であり、3番目に「都市空間の復興」である。まさに21世紀に向けた<理想都市神戸へのスタート>であるとでも思わねば、やってられるか。(1995年2月10日「震災2週間の神戸から」きんもくせい創刊号)


というのが、阪神・淡路大震災直後、この大災害からの復興まちづくりに、私が最初に思ったことである。実際の復興は、1.都市基盤の復旧、2.生活・コミュニティの復興、3.産業雇用の回復、という逆の順序であったが。特に、最も急を要し重要であると直感した産業雇用の回復は、結局20年経っても、新長田を中心にした小売商業・地場産業の経済地盤沈下を回復できずにいる。

●この10年の震災復興まちづくりとは結局何であったのか?私の結論は「いろいろな地域における、さまざまな市民による、まちづくりプラットフォームとまちづくりネットワーク運動」であったのではないかと、思っている。阪神大震災からの復興においてわかったことは、「地域力・市民力・場所力」の3つの力が大規模災害に対し「うたれ」強い都市の基本であるということである。大震災などでは、<まちづくりプラットフォーム>と<まちづくりネットワーク>が、被災地の「現場」に確立され、被災民の「細部」に至るまで行き届くことが<復興>である。現場(リアリティ)に真実はあり、細部(ディテール)に神々は宿る、のである。(2005年1月「復興まちづくりの10年」季刊まちづくり第5号)

そして震災10年後に思ったことは、地域力によるプラットフォームと、市民力によるネットワークが場所力によって育まれ、復興まちづくりを進めるということである。逆に復興まちづくりを活性化するためには、まちづくりのためのプラットフォーム(ゆるやかな集まり)とネットワーク(ゆるやかな繋がり)を被災地の現場に確立することである。

●災害前の「くらし」を取り戻すことが復興の前提である。しかし、将来像を作成・同意することが復興ではなく、その目標に向かいくらし(生活)を取り戻すプロセス(みちすじ)こそが、復興というべきである。復興計画に往々にして見られる大きな目標は、時間と空間の関数としての政治によってその実現は左右される。だが、目標がなくても日々の生活、つまり「その日暮らし」の一歩ずつのくらしの再建が重要である。その連続・展開こそが復興そのものであると思う。望ましい復興計画をつくれば上手くいくという幻想を持たない方がいい。「くらし(生活)」の再生は「住居=すまい、職場=しごと、社区=まち」が同時に相補って再び元の状況を取り戻して初めて成り立つ。(2015年2月「震災復興のすまいづくりとまちづくり」21世紀ひょうご第17号)

今、震災20年目にして思うことは、復興は<すまいづくり、しごとづくり、まちづくり>による「くらし」の再生だということである。すまい・しごと・まちが相補って元のくらしを取り戻していくプロセスこそが復興であり、その日々の積み重ねこそが震災復興そのものではないかということである。東北の被災地復興のみならず、世界各地の自然災害被災地においても、災害復興の基本はそこにあると思う。

1995年に起こった阪神・淡路大震災から20年が過ぎたが、99年の台湾921地震・トルココジャエリ地震、2004年の中越大震災・スマトラ沖インド洋大津波、05年のニューオーリンズ大水害、そして11年の東日本大震災大津波、とほぼ5年おきにこれら大災害からの復興まちづくりに、何らかの関わりを持ってきた。

2016年に大きな自然災害が大都市で起こらないか心配である。復興まちづくりに深く関わる者として最も心配なのは「地震時等に著しく危険な密集市街地」の存在である。

2012年3月に国交省が公表した資料では、全国で197地区5,745ha、中でも東京都墨田区・北区・品川区などの113地区1,683haと大阪府大阪市(ダントツの日本一1,333ha)・豊中市・寝屋川市・守口市など11地区2,248haと、全国の約3割が東京都、約4割が大阪府、両者で合計7割近くを占める。その全国約6,000haを2020年度までにおおむね解消するとの目標を定めた(住生活基本計画/全国計画2011年3月15日閣議決定)が、4年経ってもその「著しい危険」はほとんど改善されていない。首都直下地震が近づいているというのに、東京オリンピックなどへ政府の資金人材情報等資源を浪費している場合ではない。大阪都構想もほぼ同罪である。