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HATコラム

復興の要件 3つの「生」と3つの「自」

 
副理事長兼研究調査本部長 室﨑 益輝

室﨑 益輝
1944年生まれ
京都大学大学院工学研究科修士課程修了
工学博士
ひょうごボランタリープラザ所長
兵庫県立大学防災教育研究センター長・神戸大学名誉教授
(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構 副理事長兼研究調査本部長

当機構の研究調査活動として「東日本大震災の検証」に取り組んでいる。その検証を通して、「生活、生業、生態」という3つの「生」と、「自立、自尊、自治」という3つの「自」が復興の要件として欠かせないことを、私は学んだ。

3つの「生」は、復興の目標や課題に関わる要件である。「生活」は、被災者の暮らし全体をいう。住宅だけでは駄目で福祉や教育なども含めて、復興の目標としての生活の回復を包括的に追求しなければならない。「生業」は、生活の糧だけでなく生きがいにもつながる仕事をいう。その生業の回復がなければ、個人の復興も地域の復興も成り立たない。地域経済や雇用創出にもっと力を入れなければならない、ということである。「生態」は、人間が生きていく上で欠かせない共生的関係性を指す。ここでは自然の生態だけではなく、社会の生態も含めて考えている。歴史や文化を含めた社会的な関わりを重視している。

安全は必要条件であっても十分条件ではない。人間はパンのみで生きるにあらずである。それゆえに、生活や生業が必要だし、自然や文化とのつながりも必要となる。この3つの生を具体的にみると、「医、職、住、育、連」の5要素が、被災者の復興には欠かせないことに気付く。「医」は心身の健康の回復、「職」は雇用や生業の回復、「住」は住宅や居住環境の回復、「育」は保育や教育の回復、「連」はコミュニティのつながりや自然や歴史とのつながりをいう。最後のつながりでは、コミュニティの再生に努めるだけでなく、自然や歴史、文化や芸能、土地や景観とのつながりの再生に努めることが求められる。生きる上での共生的関係性に、もっと着目しなければならないと思っている。

さて、3つの「自」に話を移そう。3つの「自」は復興の手段やプロセスに関わる要件である。「自立」は、被災者や被災地が自らの力で生きていける状態になることである。この自立は自助にもつながる。自助をはかるには、自立を引き出さなければならない。避難所では自らの力で食事を作ろうとする力を引き出すこと、仮住まい状態では自らの力で住宅再建していこうとする力を引き出すことが求められる。与える支援ではなく、引き出す支援が必要ということである。

「自尊」というのは、被災者が希望と勇気をもって生きていく状態をいう。自尊は自信につながる。被災がもたらす絶望や挫折を乗り越えて、復興への自信や希望を取り戻すことが欠かせない。復興では挑戦が欠かせないが、それは自らを信じるところから生まれる。そのために、復興の必要性だけでなく可能性を語る必要がある。心のケアでは、自信を取り戻すことにこだわる必要がある。どうすれば復興できるかの見通しやビジョンを、議論することや提起することが欠かせない。力を引き出す自立に加えて、心を引き出す自尊が必要なのだ。

「自治」というのは、復興の道筋や未来の目標を自らで決めることをいう。民主的なプロセスが自治である。この自治は自発につながる。ボトムアップの力を生み出し、復興における自発性や協働性を高めるのである。地域のことを一番知っている人が、地域再生の主人公になり、また被災者に寄り添う伴走者になる。コミュニティの自治や基礎自治体の自治が求められるゆえんである。

最後の復興の自治ということでは、コミュニティや自治体に責任だけでなく権限を与えること、まちづくり協議会のような合議体を構築すること、傷ついた自治体の自治の回復に心掛けることが、復興では欠かせない要件となる。ひも付きの予算で自治体の選択権を奪うことがあってはならないし、制度の硬直的な運用でコミュニティの自由な選択を阻むことがあってはいけない。