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HATコラム

今後の巨大災害対応について

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター上級研究員 金田 義行

金田 義行
1953年生まれ
東京大学理系大学院地球物理修士課程修了(理学博士)
香川大学学長特別補佐
四国危機管理研究教育・研究・地域連携推進機構副機構長
(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構 阪神・淡路大震災記念
人と防災未来センター上級研究員

2017年を振り返ると国内では7月の九州北部豪雨災害や8月の台風被害など風水害が多発し、海外に目を向ければメキシコ地震や米国やカリブ海沿岸でのハリケーン被害、アジアではバングラディッシュはじめ各国で洪水、土砂災害が発生した年であった。2018年は1923年大正関東地震から95年、1933年昭和三陸地震から85年、1943年鳥取地震から75年ならびに1948年福井地震から70年などの年である。風水害では、1953年西日本水害から65年、1958年狩野川台風から60年の年でもある。

さて、東日本大震災から7年、阪神・淡路大震災から23年の今年はどのような年になるであろうか?

人と防災未来センターの研究活動は各被災地での調査や行政支援などに基づく現場に携わらなければできない重要な成果を挙げており、災害後の被災地の課題抽出や教訓に基づく提案なども少なくない。例えば、植生から見た土砂災害リスク評価研究は最近多発する土砂災害リスク評価の指標として、針葉樹、広葉樹あるいは果樹園の分布と被害分布の相関が示され、杉に代表される針葉樹の分布域と土砂災害の相関が高いとの興味深い調査研究が報告された。また、被災地の空間資源の評価では、災害時の対応、災害後の迅速な地域復興、強靭化においては空間資源の活用が非常に重要であり、熊本地震の被災地の復興経緯から見た空間資源利用とその課題が報告され、今後の事前復興計画において重要な指標となることが示された。

これら多くの現地調査等により興味深い研究が推進されており、今後の南海トラフ巨大地震や首都直下地震をはじめとした自然災害対策と事前復興の議論に大きな貢献が期待できる。特に、南海トラフ巨大地震の際には、広域複合災害が想定され、阪神・淡路大震災、東日本大震災ならびに熊本地震の教訓をどう活かすかが最大の課題となる。さらに少し時間スケールを拡げて、南海トラフ巨大地震前後に発生すると推定される巨大台風被害や広島土砂災害/九州北部豪雨災害のような土砂災害なども広義の複合災害としてその対策を検討する必要があろう。南海トラフ巨大地震ではさらに以下の課題が想定される。

一つは、巨大地震に伴う地盤沈下や地盤隆起に伴う地域の影響である。

東日本大震災の教訓として、南海トラフ巨大地震震源域の沿岸の地盤沈下に関しては、長期湛水を解決したとしても短期間で地盤沈下が解消されることはなく、津波により被災する防潮堤等の再建が早期には期待できないことと相まって、長期間にわたり高潮被害に直面することが危惧されることである。

港湾被害対策も救援や復興において重要な課題である。また、阪神・淡路大震災の港湾被害の教訓として、荷役量の大きな港湾での被害は、結果的に国内外からの物流ルートの変更を余儀なくされることとなり、地域の復興にとって大きな影響を与えることなる。

他方は、瓦礫処理問題である。環境省の見積もりによれば、南海トラフ巨大地震では最大で災害廃棄物:約3億2,000万トン、津波堆積物:約3,000万トンが発生する。これは東日本大震災の発生量(災害廃棄物:約2,000万トン、津波堆積物:約1,000万トン)と比べ、最大で約16倍の災害廃棄物と約3倍の津波堆積物が発生する結果となり、その総量の規模を踏まえれば、瓦礫の事前処理計画の構築が急務であり、そのためには先述の空間資源評価研究の推進が不可欠である。

先日の内閣府による大震法の見直しでは、南海トラフ巨大地震の発生時期をピンポイントで予知することは不可能と判断されたことは記憶に新しいが、今後の災害対応の重要な点としては、予測研究の高精度化は引き続き推進するものの、必ず来る巨大地震発生シナリオ(同時発生、時間差発生等)の多様性を考慮した自治体の対策・対応をより現実的な視点で検討・整備することである。

また、地震津波の観測監視システムがさらに南海トラフ巨大地震震源域の西方に整備されることになれば、地震津波の早期検知能力の向上が期待され、このような地震津波情報が地域で利活用されることで災害対応と被害軽減に大きな貢献を果たすことになろう。

 2018年は災害が少ない年であることを願いつつ、その対策を着実に推進する年にしたいものである。