「翔べフェニックス」

― 発刊当時の井戸・兵庫県知事のコメント ―

阪神・淡路大震災
十周年記念出版に寄せて

兵庫県知事 井戸敏三

一瞬にして六千人を超えるかけがえのない命が失われ、ふるさと兵庫に深い傷跡を残した阪神・淡路大震災。あの日から十年が経過しようとしています。

創造的復興をめざし、灰の中から甦る不死鳥の名前を冠した復興計画「フェニックス計画」もいよいよ最終段階を迎え、ちょうど今、復興十年を総括する検証作業が進められています。復興の過程に関わった五十四名の委員の皆様により、被災現場の実態や復興に携わった人々の証言などを基に、さまざまな角度から評価・検証が行われつつあります。

これまでの復旧・復興の過程を振り返り、できたこと、できなかったことをきちんと確かめること。震災の経験と教訓を後世に継承し、全世界に発信し続けていくことは、私たちに課せられた責務だと言えましょう。

このような第三者による評価・検証とあわせ、復旧・復興の実際の「現場」が何を考え、どう道を切り拓いてきたのか、そういう取り組みを合わせ見ることも大切ではないでしょうか。

阪神・淡路大震災では、復旧・復興に携わった自治体職員が被災者でもあったことも忘れることはできません。自ら被災しながら、これまでの常識がまったく通じない現実に直面し、悩み、迷い、幾多の壁に行く手を阻まれながら、被災者、被災地の復興に奮闘した県職員をはじめ関係者が、自らの経験を振り返ったのがこの記録です。

大震災が与えた試練や困難を乗り越えてきた関係者の足跡は、国や地域を超え、次代を生きる人々への確かな道しるべとなるに違いありません。そしてまた、復興の最前線で何を考え、どのような対応がなされてきたのかを伝える、軈もうひとつの歴史軋として、被災地に長く刻まれていくことでしょう。

阪神・淡路大震災からの復旧・復興の原点を改めて認識させてくれるこの記録が、安全・安心を願う一人でも多くの皆様の手に取られ、貴重な教訓として読み継がれていくことを心から願います。

(財)阪神・淡路大震災記念協会(当財団の前身)では、平成17年に震災後の創造的復興に立ち向かった職員等の行動の軌跡を記録した阪神・淡路大震災10周年記念誌「翔べフェニックス 創造的復興への軌跡」を制作しました。
今回の東日本大震災の復旧・復興の一助になればと考え、この度、(株)兵庫ジャーナル社(制作・発売元)と連携して、全文をPDF化して公開することといたしました。ご活用いただければ幸いに存じます。
なお、PDF化にあたっては兵庫県ボランティア協会のご協力を得ました。



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目 次

第一章 阪神・淡路震災復興計画

その日、災害対策本部は/不死鳥のごとく/震災復興の世界モデルに/復旧と復興文化

第二章 財政計画 被災した兵庫県財政

一月十七日/健全財政の確保/災害時の財政制度/激甚法の改正と特別財政援助法の制定/その他の財政特例措置/補正予算編成と予算専決/平成七年度当初予算―骨格予算・追加補正予算―/震災後の財政収支見通しと財政運営方針/肉付け予算の編成/震災を振り返って

第三章 阪神・淡路大震災復興基金

復興基金をつくれ/プロジェクトチーム発足/復興基金のフレーム/復興基金の役割/基金事業の積み上げ/議会・神戸市・銀行/自治省との調整/復興基金の設立/復興基金の資金フロー/基金の発展

第四章 被災者と行政の架け橋 被災者復興支援会議

架け橋を架ける/活動する会議の実態/さまざまな被災者/愛のもちより運動/対等な関係の実感を―県民ネットの発足―/被災者復興支援会議の存亡―会議の限界か行政の復旧か―/支援会議の終息/裏方? 主役?―事務局―/被災者復興支援会議の経験を活かす

第五章 生活復興への協働

フェニックス・ステーション〜「人」を介した新しいしくみ/緊急臨時組織「生活復興局」が立ち上がった/協働のしくみづくりへ/外国人県民支援への協働/生活再建のための資金/広域避難(県外居住被災者)への対応/オーダーメイドの個別支援をめざして〜生活復興支援プログラム〜/しごとづくり、仲間づくり、生きがいづくり

第六章 芸術文化の復興

ひょうご舞台芸術/心に笑顔を―県立ピッコロ劇団被災地激励活動 ―/「バルビゾンの発見」展 ―フランスからの復興支援―/アーティストの汗 ―多彩な分野で奮起 ―/芸術文化立県ひょうごへの”飛翔”

第七章 教育の創造的復興 新たな防災教育の展開

震災直後の対応/復旧への取り組み/復興への取り組み/大震災の教訓をつなぐ―心の教育の充実―

第八章 災害廃棄物処理

災害廃棄物との戦い/戦いの始まり/し尿処理/仮設トイレの確保/避難所等への設置/維持管理体制の確立/ごみ処理/ガレキ処理/処理制度の確立/処理推進体制の確立/処理の推進/災害廃棄物処理事業の完了

第九章 応急仮設住宅

仮設住宅入居が「ゼロ」に/避難所/公営住宅等への一時入居/必要戸数/用地の確保/応急仮設住宅の建設/生活環境の整備と支援体制/仮設住宅入居者実態調査/第二次一元募集/恒久住宅への移行/仮設住宅の再利用/仮設住宅の光と影

第十章 住宅復興への挑戦

大震災発生/被災建築物応急危険度判定/住宅復興三カ年計画/災害復興公営住宅/住まい復興総合プログラム/終わりに

第十一章 国民安心システム

はじめに/知事への手紙/住宅地震共済制度研究プロジェクトチーム/国会の場へ/二千五百万人の署名/第二の提案/制度の実現をめざして

第十二章 新産業創造(一)エンタープライズゾーンへの道程

挑戦への序幕 ―円高に揺らぐ兵庫経済/震災そしてエンタープライズゾーン構想/地域独自のゾーン政策/挑戦再び ―国際経済拠点構想/構造改革特区・地域再生プログラムへの進化

第十二章 新産業創造(二)NIRO(新産業創造研究機構)誕生

切り札 震災から始まった挑戦/始動「知」と「技」集め復興を/新機軸「設備なき研究所」構想/技術移転 中小と結ぶ「キーマン」/TLO 大学の「知」を地域に/産学官連携 「持続可能な街」追求/「平和力」育てて復興を 前兵庫県知事 貝原俊民氏

第十三章 上海・長江交易促進プロジェクト

はじめに/「上海・長江交易促進プロジェクト」の推進/「上海・長江交易促進プロジェクト」の実現に向けた取り組み〜紆余曲折の道のり〜/「新たな中国人街(ビジネス中華街)」の形成/今後の発展方向/おわりに〜みなとまち神戸の新しいまちづくりの一環として〜

第十四章神戸医療産業都市構想 先端医療に賭ける神戸復興の夢

序章 アメリカに賭ける/復興の挫折 集客から先端医療へ/先端医療の先進国アメリカへ/世界企業GEの先端医療技術/ヒューストンのメディカルクラスター/地域経済の中核 メイヨークリニック/クラスターづくりの始動/ミレニアムプロジェクトによる構想の具体化/関西のスーパークラスターを目指して

第十五章 人間サイズのまちづくり

阪神・淡路大震災によるまちの被災/復興まちづくりへの始動/復興まちづくりへの取り組み/住民主体のまちづくりの萌芽/安全・安心・魅力 ―人間サイズのまちづくり

第十六章インフラ復興

住民の足の確保/二次災害で一人の犠牲者も出すな

第十七章 国際園芸・造園博 ジャパンフローラ二〇〇〇(淡路花博)

日本人は花好き/明石海峡大橋完成記念の「世紀の大祭典」/大震災でふくらむ意義/花に染まって自然のリズムを/不滅のジャパンフローラ精神

第十八章 新防災システム 災害対応総合情報ネットワークシステム

発災直後の情報不足/国庫補助とシステム開発の始動/システムの機能/システムの内容/平常時利用とシステムを生かす体制/災害対応支援システム/システムのWeb化

第十九章 兵庫県災害医療センターの整備

災害医療の実態/災害医療センターの必要性/日赤病院と災害医療センター/神戸大学との連携/関係機関等との調整/災害医療センターの設計・建設

第二十章 災害救援専門ボランティア制度

はじめに/災害救援ボランティア等の活躍/災害救援専門ボランティア制度の創設に向けて/フェニックス救援隊の発足に向けた取り組み/フェニックス救援隊の活動/フェニックス救援隊の今後

第二十一章 義援金

こころの優しさと連帯/義援金の配分の難しさ/義援金の募集と配分システムの確立/お礼と連帯 ―兵庫県の実践

第二十二章 阪神・淡路大震災記念協会 二十一世紀文明の創造への貢献

はじめに/阪神・淡路大震災の発生/復旧・復興対策への取り組み/地元主導の復興への取り組み/阪神・淡路復興委員会の設置/阪神・淡路復興委員会の運営/阪神・淡路復興委員会の意見と提言/二十一世紀文明の創造への貢献/阪神・淡路大震災記念プロジェクトの具体化に向けて/阪神・淡路大震災記念協会の設立/なお続く「二十一世紀文明」への貢献の取り組み/おわりに

第二十三章 人と防災未来センター 減災への貢献

追い風(阪神・淡路大震災記念プロジェクト)/苦闘の始まり(阪神・淡路大震災メモリアルセンター)/そして、神風は吹いた/それぞれの戦士たち/時満ちて(一期施設「防災未来館」)/もう一つの教訓(ヘルスケアパーク)/花の時(二期施設「ひと未来館」)/明日へ、未来へ(減災への貢献)/むすびに

第二十四章 神戸東部新都心「いのち」を守り、健やかに「生きる」

いのちを守る〜コンセプト〜/にぎわいを求めて〜施設配置〜/街なみをつくる〜デザイン計画〜/人間サイズでいこう〜アクセス〜/おわりに

編集後記