「翔べフェニックスⅡ」

― 井戸・兵庫県知事のコメント ―

阪神・淡路大震災
二十年記念出版に寄せて

兵庫県知事 井戸敏三

二〇一五年一月十七日、阪神・淡路大震災の発生から二十年の歳月が経過しました。改めて、亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りしますとともに、幾多の困難を乗り越えてこられたご遺族や被災者の皆様に敬意を表します。

この二十年間、内外から多くのご支援や励ましをいただきながら、創造的復興をめざし懸命の努力を積み重ねてきました。被災者の生活支援、安全で安心な住まいの確保、災害に強いまちづくりなど、手探りの挑戦が続く中、多くの皆さんの知恵と努力、そして何より人と人との支え合いによって、被災地ひょうごは不死鳥・フェニックスのように蘇ることができたのです。

震災以降も、毎年のように自然災害は各地で猛威を振るいました。鳥取県西部や新潟県中越地震をはじめ、海外では、トルコや台湾、中国・四川省などで大地震が発生しました。そして、あの東日本大震災がありました。

私たちは、今こそ自らの経験や教訓を生かそうと、人と防災未来センターや国際防災復興協力機構、アジア防災センターなどの国際防災機関と連携して内外の被災地の復旧復興を支援してきました。東日本大震災では、関西広域連合によるカウンターパート方式での支援が成果を生みました。新たなまちづくりが進む東日本大震災の被災地では、今も多くの本県や市町の職員、ボランティアの皆さんなどが自らの知見を生かし、被災地の自立復興を支援しています。

震災から二十年、被災地ひょうごでも、震災の経験者が減り、記憶の風化が懸念されています。一方、今後三十年以内に七〇%の確率で起こるとされる南海トラフ地震や首都直下地震など、巨大災害の発生が指摘されています。

自然災害は避けることはできません。それだけに、これまでの歩みを振り返り、私たちの経験や教訓を共有して、日頃から減災の取り組みを進め、被災後の復旧復興の筋道を準備する「災害文化」を定着、発展させることが何よりも重要です。

本書では、阪神・淡路大震災の復旧復興や防災・減災対策に取り組んでこられた各分野のキーパーソンが、それぞれの二十年を振り返っています。阪神・淡路と東日本、二つの大震災を多面的な視点で捉え、自身の経験と深い洞察をもとに得られた知見を語っています。

防災減災社会の構築をめざす私たちの取り組みに終わりはありません。本書が、将来の大規模災害に備える貴重な教訓として、地域や時を越えて読み継がれることを願っています。

阪神・淡路大震災から二十年を目前に控えた昨年十一月、貝原俊民前兵庫県知事がご逝去されました。貝原前知事は、阪神・淡路大震災発生時の知事として先頭に立ち、創造的復興をめざし全身全霊で打ち込んでこられました。知事退任後も震災の経験や教訓を伝える活動を続けられ、本書でも巨大災害に対する備えのあり方を大所高所から論じておられます。これからも災害文化の発信に大いに力を発揮していただきたかっただけに、痛惜の念に堪えません。

心から哀悼の誠を捧げるとともに、その志を引き継ぎ、安全で安心なふるさと兵庫の実現をめざし、力強く歩んでいきたいと願っています。

(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構では、阪神・淡路大震災20年を迎えるにあたり、復興への歩みや、さらなる大災害にどう備えるべきかなど、さまざまな視点から防災・減災社会の構築に向けた取り組みを伝えるため、各分野を代表する著名人(17名)の執筆により、「翔べ フェニックス」(平成17年刊行)の続編となる「翔べ フェニックスⅡ 防災・減災社会の構築」を刊行しました。
将来の大規模災害への備えについて考える一助になればと考え、全文をPDF化して公開することといたしました。ご活用いただければ幸いに存じます。



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目 次

序文・目次

<総括>

第一章 新野 幸次郎 阪神・淡路大震災二十年に当たって
-「3・11」を経てあらためて「1・17」からの復興を考える-

阪神・淡路大震災復興の成果について/阪神・淡路大震災復興の課題/むすびにかえて- 東日本大震災の復興過程を見つめながら-

<挑戦>

第二章 井戸 敏三 大規模災害に立ち向かう
-自治体広域支援-

被災された人々のために/関西広域連合の設立/東日本大震災被災地への支援/新しい広域防災のしくみづくり/大規模・広域災害に立ち向かう関西-来たるべき災害に備えて

第三章 齋藤 富雄 防災最前線の充実
-自治体の防災力強化-

対岸の大地震/注目の組織/FEMAを知る/地方分権への流れ/大試練の始まり/秘書課長の動転/孤島と化した拠点/混乱の中での苦闘/安全への油断/強化への開眼/芽生える/防災監始動/試練の中から/心得三十六カ条/充実の波、広がる/歩みを確かなものに

第四章 河田 惠昭 実践的防災を先導する「人と防災未来センター」

兵庫県参与、センター長就任と当時の学術研究事情/センターの機能充実/英文表記とミッション

第五章 小澤 修一 成長する災害医療へ

災害医療の道へ/兵庫県が生かした教訓/「国際防災・人道支援協議会(減災同盟)」発進/東日本大震災-HEMCチーム出動/神戸赤十字病院との連携

第六章 松岡 由季 兵庫行動枠組と国際防災分野の発展

国連防災世界会議の兵庫開催/二〇〇五年以降の国際防災分野の発展/UNISDR駐日事務所の開設/兵庫行動枠組の実施推進/二〇一五年国連防災世界会議に向けて

第七章 立木 茂雄 災害時の高齢者や障害者などへの対応
-阪神・淡路から東日本大震災までの対応の展開と今後の見通し-

阪神・淡路大震災時の高齢者や障害者の置かれた社会的状況-「災害弱者」モデルとその批判的検討-/阪神・淡路大震災以降のとり組み-「災害時要援護者」モデルの出現-/東日本大震災時の実相と今後の課題

<市民力>

第八章 室﨑 益輝 ボランティア文化の創生

阪神・淡路大震災でのボランティア活動/救援から復興を通しての市民活動の芽生え/市民活動の広がりとボランタリープラザの開設/ボランタリープラザを中心とした市民活動の広がり/災害ボランティアと災害支援活動の発展/兵庫県での災害ボランティア活動の展開/東日本大震災後のボランタリー活動の進化/市民活動の成熟がもたらすボランティア文化

第九章 清原 桂子 被災者の生活復興

今を生きがいをもって暮らすために/個別相談・見守りとコミュニティづくりを両輪で/民間と行政の協働/男女共同参画への取り組み

第十章 佐渡 裕 コンサートホールを街の広場に

人間にとって音楽とは/子どもたちに感動を/「自分たちの劇場」に向けて/楽しみを持つことのよろこび/未来に向かって進む楽団/プロデュースオペラの展開/ドイツで演奏した「第九」/鎮魂の東北公演/津波で楽器を流された/みんなが集まって歌うこと/「心の広場」となる劇場

第十一章 宮川 知雄 防災士を育てる

防災士養成制度発足の原点/防災士制度研究会の発足/防災士制度に関する検討委員会の発足/防災士制度推進委員会の発足/日本防災士機構の誕生/日本防災士会の発足/防災士の活動/日本防災士機構の主たる業務/これからの展望

<絆>

第十二章 野尻 武敏 ヒューマンケア
-人間回復にむけて-

大震災とヒューマンケア/県民運動とヒューマンケア/長寿社会研究からヒューマンケア研究へ/二十一世紀文明とヒューマンケア

第十三章 加藤 寛 こころのケアの始まりとその後の発展

こころのケアの誕生/「こころのケア」の再登場と意味の付与/精神科医療活動としてのこころのケア活動/トラウマ、死別をめぐって/生活復興と心の回復-二次的ストレスが引き起こす問題-/専従組織「こころのケアセンター」の設置/兵庫県こころのケアセンターの設立/設立後の活動/東日本大震災

第十四章 諏訪 清二 防災教育の広がりと深まり

全国的な広がり/舞子高校環境防災科/兵庫県内の防災教育のとりくみ

第十五章 安藤 忠雄 心をつなぎ、ともに生きる

震災の衝撃/ひょうごグリーンネットワーク/東日本大震災-鎮魂の森づくり/桃・柿育英会/夢と勇気をもって

<展望>

第十六章 五百旗頭 真 近代日本の三大震災
−復旧と創造的復興の相剋を中心に-

関東大震災-一九二三年九月一日午前十一時五十八分発災-/阪神・淡路大震災-一九九五年一月十七日午前五時四十六分発災-/東日本大震災-二〇一一年三月十一日午後二時四十六分発災-

第十七章 貝原 俊民 阪神・淡路大震災から二十年
〝国難〞−巨大震災に備えて

大震災が確実に襲来する/近代化が災害を大きくする/日本の近未来と〝国難〞/国家戦略の方向性/〝田舎暮らし〞の奨め/国難-巨大地震対策/〝国難〞からの復興/兵庫の挑戦

あとがき