研究戦略センター 学術交流部

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21世紀減災社会シンポジウム

防災・減災社会の構築を目指し、重点研究領域の研究成果も踏まえ、行政関係者・県民が一堂に会し、幅広い観点から議論を深めます。

令和7年度の開催結果

令和7年度「21世紀減災社会シンポジウム」
津波から命を守るために~東日本大震災15 年・次の巨大地震への教訓の開催結果

日 時 令和8年1月23日(金)13:00~16:30
場 所 仙台市戦災復興記念館(仙台市青葉区大町2-12-1)
テーマ 「津波から命を守るために ~東日本大震災15年・次の巨大地震への教訓」
参加者 544人(来場110人、オンライン434人)
内 容
(1)開会挨拶
  • ・主催者挨拶
  • 坂尻 顕吾
  • (朝日新聞社取締役
    (コンテンツ統括/編集担当))
  • ・共催者挨拶
  • 一力 雅彦
  • (河北新報社代表取締役社長)
  • ・開催地代表挨拶
  • 伊藤 哲也
  • (宮城県副知事)
(2)基調講演
今村 文彦
(東北大学副学長・災害科学国際研究所教授)
「東日本大震災に学ぶ ~津波の脅威から身を守る~」
(3)朗読
Team Sendai
(仙台市職員有志の自主研究グループ)
(4)パネルディスカッション
コーディネーター
御厨 貴
(機構研究戦略センター長・東京大学名誉教授)
パネリスト
矢守 克也
(京都大学防災研究所副所長・教授)
佐藤 仁
(前南三陸町長)
丹野 祐子
(津波復興祈念資料館「閖上の記憶」代表)
越中谷 郁子
(河北新報社記者)

○基調講演
東北大学副学長で災害科学国際研究所教授の今村文彦氏が「東日本大震災に学ぶ~津波の脅威から身を守る~」と題して基調講演を行いました。

今村氏は、東日本大震災が地震・津波・原発事故という複合災害であったことを改めて確認した上で、津波のメカニズムについて科学的に解説。「津波は一定の猶予時間があるため、適切な判断と行動が取れれば人的被害をゼロにできる。しかし、それが非常に難しい」と指摘し、津波避難の課題を浮き彫りにしました。
また、津波避難の要点として「津波スクリプト」と「避難認知マップ」の作成を提案し、「災害発生前から発生後までの時系列的な変化を自分の中でイメージし、スクリプトとして書き出してみることで、次の行動が判断しやすくなる」と説明しました。

○朗読
続いて、仙台市職員などによる自主研究グループ「Team Sendai」が、震災時の体験を朗読という手法で伝えました。避難所での町内会長の奮闘、現場で汗を流した保健師の記録、当時の仙台市長が語った「神戸から受け継いだバトンをもう一段上げて次へ」という決意。
公的な記録には残りにくい、しかし大切な記憶が、丁寧に語られました。「民話や祭りなどのように、人が人に直接伝えることで、100年後、1000年後にまで伝えることができる」というメッセージは、会場に深い感動を呼びました。

○パネルディスカッション
当機構研究戦略センターの御厨貴センター長がコーディネーターを務め、4名のパネリストが登壇しました。



京都大学防災研究所副所長の矢守克也氏は、高知県黒潮町での取り組みを紹介。南海トラフ地震の新想定で全国最悪の津波想定34メートルが発表された当時、現地の住民には絶望感が広がっていたそうですが、「大きな災害に立ち向かおうとするからこそ、小さな、今すぐできることから始めることが重要である」と提案。高齢者を中心に「玄関先まで出てくる」ことをゴールとした避難訓練や、「防災リハビリ教室」で高齢者が6分間歩けるようになることを目指す取り組みを紹介しました。



元南三陸町長の佐藤仁氏は、震災当日に町防災対策庁舎で津波に巻き込まれながらも生還した体験を振り返り、「なりわいの場所は様々であっても住まいは高台に」を基本方針として進めた高台移転事業について説明。事前防災の重要性を強調し、「行政には限界があるということを日頃から住民の皆さんにお話をしていくことが大事。自分の命が助かってこそ他人の命を助けることができる」と述べました。



津波復興祈念資料館「閖上の記憶」代表の丹野祐子氏は、東日本大震災の津波で中学1年生の息子を亡くした母親として、語り部活動を続ける思いを語りました。「なかったことにされたくない。その思いでこの15年ずっと歩みを続けてきた」という丹野氏の言葉には、会場全体が静まり返りました。また、阪神・淡路大震災の伝承活動を例に挙げ、「30年を機に語ることをやめた人もいる。東北は15年目、つまり折り返し地点。ここが踏ん張り時」と述べ、継続的な伝承の重要性を訴えました。



河北新報社記者の越中谷郁子氏は、新聞を活用した防災教育の取り組みを紹介。中学生を対象とした「河北防災記者」プロジェクトでは、生徒たちが被災地を訪れて語り部の話を聞き、それを新聞記事にまとめて地域住民に発表する活動を続けています。「震災を実際に経験していない中学生でも、学んだことを伝えることができる。震災を知ることは備えの第一歩」と強調しました。

○総括
最後に、御厨コーディネーターは、「東日本大震災の津波という、この15年間の経験が、時間が過ぎるにつれて深掘りされている。語り部の問題も、避難訓練の問題も、最初の時からあった問題」「この東日本大震災から生まれてきた教訓は、時間が経つにしたがって深掘りされてきた。そして阪神・淡路大震災からこの東日本大震災へ、今度は南海トラフ地震へと、災害の教訓をきちんとつないでいくことが、我々のやるべき最大のことではないか」と締めくくりました。



シンポジウムを通じて、東日本大震災から15年を経て、津波防災の取り組みが着実に深化・進化していることが確認されました。ハード面の整備だけでなく、避難訓練の革新、健康づくりと防災の融合、多様な伝承手法の開発など、新しい防災の形が生まれています。 「人の口から人の心へ」―震災の記憶と教訓を次世代につなぎ、南海トラフ地震など将来の巨大地震に備えるため、継続的な取り組みの大切さが、改めて確認されたシンポジウムとなりました。